Homeコラム都高六十年記念誌思い出あれこれ(11)

キャンプファイヤーとフォークの間 小中 陽太郎

 現役のファイヤーはどういうものか知りません。 でも、きっと男女で手をとって踊っているでしょう。 そうであることを期待します。

 ぼくの一年生のときまではそうではなかった。 ぼくが都高に入ったのは、一九五二年のことです。 最上級は、旧制として入学し、女子は急遽、高校になって、少人数を募集しました。 ぼくのときでも男子と女子五〇の小じんまりした学年でした。

 さて、ぼくの二年のときです。 記念祭の執行委員長になりました。 いろいろ改革に心をくばりましたが、最大の問題はファイヤーでした。

 それまで、キャンプファイヤーは、いわば男子の特権として、高下駄にマントで放歌高吟するものでした。

 それはそれでなかなかいい。

 でもそれだけでは、全校三分の一弱の女子はポカンと見ているだけではありませんか。 前の年も、男女でペアーをつくろうとしたけれど「手を取って」といったら、スクラムのように肩を組んだ、という(笑)話があるときでした。
 それで、いろいろ討議して、寮歌や応援歌の間に、何曲かにかぎって、フォークダンスをしよう、ということになりました。

 早速、昼休みにフォークの練習をしました。 その後、全学連で活躍する女性の運動家Hさんと、フォークダンスを練習している写真があります。

 本番は、あまり盛り上がりませんでした。 男女ともに、慣れず、面白くなかった。 でも、ぼくには、やがてファイヤーにも女子がくわわる、という予感はありました。

 いま考えると、これはファイヤーへの女性参加というより、当時やっていた「うたごえ」運動の産物という気がしないでもありません。

 いまの都立のキャンプファイヤーがどういうものか知りません。 存外、昔に戻っているかもしれない。 途中でできない時もあったとききます。

 ファイヤーは時代によって変わっていい。

 でも、もし、今男子と女子で楽しく青春を満悦しているとしたら、とまどいがちに手をさしのべあった先輩たちがいたことを、たまに思い出してほしいものです。

(四期)
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